生きるとは?生き残るとは?
世界三大北壁のひとつグランドジョラス北壁ウォーカー稜冬期登攀の奇跡的な記録です。
この男たちは、フィジカルに格闘することでしか得られないものを渇望しながら生を感じています。その真の相手とは一体何なのでしょう?また登山/クライミングは一見シンプルなのに、時に人生に喩えられるほどに豊穣なものを内包している、その奥深さはどう表現したらよいのでしょう?彼ら自身にもうまく答えることは多分難しいと思います。
読中、このような極限状態では『一見ささやかな失敗』が大きな意味を持ってくることをひしひしと感じました。一旦失敗を犯せば、それはそのまま死へと直結します。死の恐怖の克服、絶望からの回避への希求。それらをどこまで強く心に留められるか。そして生還するには、何より冷静さが欠かせません。
死へこそ直結しませんが、社会で生きる我々もある種の生き残りをかけて日々戦っている部分があります。極限状態でなくとも得られるヒントは深く示唆的です。
凍傷との戦い
1971年に山と渓谷社から出た単行本の文庫化。
1971年にグランドジョラス北壁の冬季登攀に挑んだ記録。
死と隣り合わせの危険な体験が、迫力ある文章で綴られた名登山記。想像以上に困難な岩壁、突然の猛吹雪、凍傷の恐怖など、次々と困難が襲いかかってくる。一歩、足を踏み外せば自身と仲間の命はない。そこで試されるのが人間の精神力の限界である。
引き込まれるように読み切ってしまった。
次代の登山家のための「北壁ノート」なども併録されている。
正調!小西節
山を始めたばかりの頃に読んだ。
登攀記にありがちな大袈裟な表現が抑えられつつも臨場感に溢れ、
ただの山極道ではない著者の文章力に畏敬の念を感じた。
『マッターホルン北壁』から続き、ジャヌーに至る山岳同志会の歴史の1ページを記録している。
小西氏の本はどれもお勧めだが、一つ選ぶとしたら、この本だと思う。
最近は手元に置いてないので暫く読み返してないが、生きた言葉、生きた文章のオンパレードで、
将に正調小西節ここに極まれり、といったところか。
ワシが尊敬し、その著書を愛読していた元零戦パイロットの
坂井三郎氏に性格も文章も近いものを感じ、現場を指揮するリーダーの典型を見る思いがした。
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